彼らが本気で編むときは、
話題の映画を観た。
一言で言うと、
観て良かった。
トランスジェンダーの人の心の内を、ドキュメンタリーよりも分かりやすく描いていたと思う。
そんな感じなんだ!と初めてわかったり、共感できたりする場面がいくつもあった。
でもちょっと気になったのは、
昔からある「女性ってこういうもの」といった認識や性役割を、疑いもせずに前提としていないか?
ということ。
つまり具体的に言うと(ここから先はネタバレになる可能性があるので、これから観るのを楽しみにしている人は読まないで欲しいのだけれど)、
リンコさんは、お料理が上手で編み物もする、愛らしい服装をして、きれいにお化粧やマニキュアもして、小学生の女の子の髪を可愛く結ってあげる、ひとさまを優しく上手に世話してあげられる女性として描かれている。
でもそれだから女性として素晴らしいとか、それだから立派に女性であるとか、女性はそうでなくてはならないということはないはず。
リンコさんのようにお料理しない、子供の髪を結ってもあげないミムラ(ここで突然役名でなく芸名が登場するのは私が役名を覚えていないためなので許して欲しい)だって立派に女性であるはずだが、
それでは女性としてリンコさんに劣ると観ている人は感じてしまうのでは?とちょっと思った。
ミムラ(の役の女性)は、人間としてリンコさんに劣るかも知れないけど、女性として劣るわけではないと私は思う。
男性だけど家庭でお料理をする柏原収史(また芸名呼び捨てでゴメン)を登場させることによって、
「別に固定化した性役割を認めているわけじゃないよ」と監督は言いたかったのかも知れないけど。
もしリンコさんがいわゆる女性らしい女性じゃなかったら?
お料理もせず、可愛い服装もせず、全然優しくもなく人の世話もせず、いつも膝を内側に折っているような人じゃなかったら?
まあそうなると話が複雑になるのかも知れないけれど、
お料理をすることや美しさ・可愛らしさや優しさや人の世話をすること等が女性の属性ではないということははっきりさせておきたいと私は思う。
でもとにかくこの作品は、LGBTの概念がまだ社会に馴染んでいない(と私は考えている)日本では、
入門編的な良い作品であると思う。
実はもう一つ気になることがあったが、
それはまたあらためて書こう。
観客の入りはいまいちだったな。
平日だから仕方がないのかな。
私は観て良かったし、たくさんの人に観てほしい映画である。